天安門遠景

天安門遠景

天安門五星紅旗

天安門五星紅旗

珍しく青空が広がった北京の街並みは、すでに秋の気配を漂わせていた。
皇帝の居城であった紫禁城(故宮)を中心に広がる街並みも、今や高層ビルが立ち並ぶ喧騒の都市と化している。渋滞に苛立ち鳴り響くクラクション、建設工事現場の地響き、商店から漏れる大音量の音楽。

灯草胡同

灯草胡同

灯草胡同

灯草胡同

灯草胡同

灯草胡同

東四

東四

東四

東四

1989年に起こった天安門事件以前の北京は、静かに時が流れる街が広がっていた。
馬路(マールー)と呼ばれる大通りから横に伸びる胡同(フートン)に入ると世界は一変し、色の無くなったモノクロームの空間で庶民は暮らしていた。
春には柳の種「柳絮」(りゅうじょ)が舞い、秋には棗の実や鈴懸の実が道を覆うくらいに生り、物売りや苦力(くーりー)が曳くリヤカー、荷物を山のように積んだロバが静かに馬路を渡っていた。

北京の伝統的住宅は「四合院」(しごういん)と呼ばれ、細い脇道フートン沿いの高い塀に囲まれた中にある。中庭を中心に四方に部屋が配置され、数家族で共有する四合院もあり、共有の井戸を使い中庭で食事や洗濯をし、トイレは外にある便所を共有していた。

そんな北京特有の四合院も、天安門事件以降次々と取り壊され、新しいマンションやオフィスビルへと変貌し、クーリーは消え、ロバ車の代りに高級外車の渋滞になった。
今では四合院も伝統的保存地区に指定され、わずか数か所に残されているだけとなったが、特別観光地化されるわけでもなく、わずかな人々が普段通りの生活をしている。

四合院前通り

四合院前通り

四合院賓館看板

四合院賓館看板

四合院中庭

四合院中庭

ラウンジ

ラウンジ

貴賓室前

貴賓室前

一般客室

一般客室

一般客室

一般客室

しかしそんな四合院を改築し、北京の昔日を体験できる「四合院ホテル」がここ数年で何軒かできた。
清朝の時代からさほど変わらないフートンを歩いて行くと、赤い提灯がなければ通り過ぎてしまいそうな、看板一つない四合院ホテル。

貴賓室リビング

貴賓室リビング

貴賓室ベッド

貴賓室ベッド

貴賓室バスルーム

貴賓室バスルーム

天蓋付ベッド

天蓋付ベッド

一般客室内部

一般客室内部

一般客室シャワールーム

一般客室シャワールーム

フロントとロビーを合わせても四畳半程度しかないが、中に進むと意外と広く、中庭を中心に8~13部屋程の客室がある。中心の庭に面した貴賓室とVIPルームは中国らしい雰囲気のリビングルームや天蓋付ダブルベッド、バスルームが個別にある。一般客室でも十分な広さがあり、バスタブはないもののシャワールームが備わっている。

 平屋レンガ造り部屋は意外と夏でも涼しく、マイナス10℃以上になる厳冬の北京でも寒気が部屋に入ることはない。夜になるとそこかしこに掲げられた赤い提灯の薄明かりが一段と昔の北京を想起させる。

八重咲ばら

八重咲ばら

四合院に一歩足を踏み入れると、そこにはとても中国の首都中心部とは思えない静寂と、時が滲んだ世界が広がっている。シンボルツリーの棗の木にはセミが鳴き、八重咲きのバラが初秋の風に揺らぎ、木々の木漏れ日が地表に陰影の万華鏡を映し出している。
 私は一人中庭に佇むと、紫煙の向こう側に時が滲んだ昔日の北京を見たような気がした。