忍者・ナナフシ(七節)発見!

枯れ枝への下手な擬態

枯れ枝への下手な擬態


ナナフシと聞いてすぐに昆虫の「ナナフシ」を思い浮かべた人はかなり昆虫に詳しい方かアウトドア派もしくは相当な田舎に住んでいる方であろう。
 かく言う私も幼少のころから、多くの子ども達に「昆虫博士!」と尊敬の眼差しで見られることもなく、単なる田舎者であったため昆虫に関しては少々詳しい。
 しかし日々の生活がアウトドアみたいなもので、クモやゴキブリ、ノミ、シラミなどと共存共栄していたのだから好きではない。
障子の桟への擬態

障子の桟への擬態


今朝、台風12号を心配しながら庭先でボーっと紫煙をくゆらせていると、和室の障子の桟(さん)に違和感をかんじた。網戸がはまっている側だったが遠目にも違和感があったため近づいて見ると、なんとそこには障子の桟(さん)に擬態(※注1)したナナフシがいた。
 通常は忍者の如く木の枝に擬態して外敵から身を守るのだが、我が家のナナフシはよほど上級者なのか障子にまで化けるのだ。しかもいたって真剣に網戸越しに化けてみせる離れ業をやって見せていた。
 もし私が師匠であったらその下手くそさに故に即刻破門しただろう。
 昆虫は外敵から身を守るためにナナフシ以外に蛾やバッタなど数多くいる。私たちもよく見ないと分からないように上手に身を潜めているのだ。
 しかるに…、我が家のナナフシときたら可哀想なほど擬態が下手だ。
先日は車を運転する私の頭の上で密かに擬態(たぶん私の髪の毛を枯れ枝と間違えたのだろう)し、遠心力に耐え切れず目の前に落ちてきた。それも25㎝ほどの大型のナナフシだった。普段ならナナフシくらいで驚かない私も、運転中しかもカーブが連続する道で突然目の前に特大のナナフシが落ちてきたため危うくガードレールにぶつかりそうになった。
 しかしそこはジェントルマン。爆発しそうな心臓を根性で落ち着かせ「レディー!こんなところでオイタするのは良くないよ(※注2)」と、そっと彼女の手を取り道端の雑草に放してやった。
 
チャールズ・ダーウインは進化論の中で「すべての種の進化は自然淘汰と遺伝子変異の繰り返しで生まれてきたもので、そこに神は介入しない」と言った。
確かに生物の進化に神は存在しないだろう。しかし我が家のナナフシには、私の髪(神)が介入したことは間違いない。

注1) ぎたい。昆虫が自衛や攻撃のため、体の色や形を周囲の植物や動物に似せること。
注2) ナナフシのほとんどはメスで、オスは国内でも10例ほどしか発見されていない。