春を告げる「梅便り」

梅花

梅花


梅花

梅花


『東風(こち)吹かば 匂ひおこせよ梅の花 あるじなしとて春な忘れそ』

※(訳)… もう少しで東から風が吹くからさ、そしたらおウメちゃん!匂いだけでいい
      からさ、ここまでちょっと来てくんない?俺がいないからって浮気なんかし
ちゃダメだかんね!

大宰府に左遷された右大臣であり匂いフェチだった菅原道真が、京都の自宅にあった梅を想って読んだとされる歌。
「三句切れ」と言われるリズムが心地よく、梅を擬人化したこの歌は菅原道真の無念さを良く表していると言われるが、個人的には「春な」と「忘れそ」の「な」と「そ」が心地いい。「春を忘るな」とした拾遺和歌集版ではダメ。
やはりここは匂いフェチをカミングアウトした道真が「忘れちゃイャ~よ!」と、梅を彼女(お梅ちゃん)に擬人化した含みを持たせたいところだ。

我が庵は東風とは真逆の遠州のからっ風(西北西の強風)が吹き荒れるのだが、今年も枝垂れ梅が満開を迎えて良い匂いを漂わせている。
 平安時代初めまでは花と言えば「梅」だったのが、武家社会になってから散りぎわの美学だか何だか知らないが「桜」に主役を奪われて私的には残念。桜はすぐ散る上に剪定できないから大きくなって庭木には不向き、それ以上に実がつかない。
 それに比べると梅の花は長く持つし、剪定して樹形を楽しめるし、何といっても実を食することも出来る。我が家の観賞用の枝垂れ梅でさえもしっかりとした「実」が付くのだ。
 梅干しを作ったり梅酒にしたりと一石三鳥くらいの働きをする。
ならば桜より梅だろうと思うのは私だけではないはず。
花札をやったことがある方はお判りになると思うが2月の札は「梅にうぐいす」。しかし我が家の統計学から言えば梅に集まるのはほとんどが「メジロ」。
 梅と桜同様に、春告げ鳥の主役をうぐいすにとられたメジロだが、鳴き声はうぐいすの単調な「ホーホケキョ」ではなく、早口言葉の「トーキョートッキョキョカキョク」や100円ライターの「チルチルミチル」のように非常に複雑で高音の美しい鳴き声をする。(注:鳴き声の聞こえ方には個人があります)
 
 おそらく私も四月になれば「やっぱり日本は桜だよな」と言っているだろうが今は二月。
如月(きさらぎ)の春を告げる梅とメジロを今しばらく楽しみたいと思う。