中国一の金持ち村「華西村」が財政破綻

村内展望台から華西村眺望

村内展望台から華西村眺望

先日、中国一裕福で金持ちの村(天下第一村)と呼ばれた中国江蘇省無錫市にある「華西村(かせいそん)」が事実上経営破綻し、株式の8割がなんと1元(20円)で売却されたとのニュースが飛び込んできた。
日本ではあまり知られていないこの華西村は、文化大革命(1966年~1976年)までは貧困を極める一農村だったが、中国共産党政府が「改革開放政策」を打ち出して以降自給自足の村経営や集団化経営で成功し、中国一(世界一)裕福な村としてもてはやされ共産党のプロバガンダ(宣伝活動)としてまた農村モデルとして世界中から注目された村だった。

 

無償提供される戸建住宅群

無償提供される戸建住宅群

村民には中国では珍しい一戸建て住宅が無償で支給され、車庫には同じく支給されたベンツやBMW、アウディなどの高級外車が並んでいた。
その上教育費や医療費、食費も無償で「頑張ればお前たちもこんな村に住めるよ」的な宣伝活動で中国国内旅行の見学先にもなっていたほど人民の憧れ的農村だった。

巨大な幸福の釣鐘

巨大な幸福の釣鐘

公園 幸福園

公園 幸福園

私も今から15年ほど前、華西村に一番勢いがあって村民一人当り一億円の出資で「空中華西村 ※注1」を建設していた当時に訪問したことがある。
観光ルート化された街並みを車で走り、村民の無償提供された住宅を訪問し高級外車を自慢された記憶がある。村内にはやたら巨大な幸福の鐘があり訪問者は華西村にあやかろうとこれまた巨大な鐘木(鐘突き棒)を引かされ、展望台では村の自慢話を聞かされた挙句に最後は劇場に通され「抗日戦争」の小芝居鑑賞。
ここを訪れる観光客はほぼ中国人民なだけに、日本と戦った英雄たちを称えるミュージカル風小芝居は人気を博していたらしい。
華西村案内担当者は何の意図があってか我々日本人を最前列に据え、後方の中国人民は我々日本人の頭越しに抗日戦争ミュージカルを見ていた。
何を見せられるか知らなかった私は開始早々5分で席を立ち、場外の売店で販売されていた華西村関連グッズを軽蔑の目で見ながら時間を潰した。

あれから十数年、村営の複合企業「華西集団(グループ)」は金融業・石油化学産業・海運業における巨額負債が村の財政を圧迫し先日の経営破綻に至った。最終的な負債は日本円でなんと8兆円!2023年度の東京都一般会計予算と同じだった。

「夏草や 兵(つわもの)どもが 夢の跡」

芭蕉の句が脳裏に浮かんだ。

注1. 中国経済の象徴的高級ホテルとして2011年にオープン。高さ328m、総工費360億。
回転展望レストランや屋上プール、映画館、ショッピングモールが併設され、60階には1
トンの金塊で作られた「金の牛」が飾られていた。