黄昏の茶業界

異例の速さで始まった今年の1番茶から早や2ヶ月が過ぎようとしている。
適期に降雨が少なかった影響で良質の新芽が出たことで出だしこそ好調だった単価も次第に下落し、取扱い数量は過去最低だった前年より二割近く少なかったと言う。(平均単価は一割増)

ニ茶を前に刈り込まれたお茶畑

ニ茶を前に刈り込まれたお茶畑


今はすでに2番茶も終わったが、今年は1番茶を終えた茶園の何かが違う・・・と思っていたのが樹を深くカットする「深刈り」「中切り」された茶園が多いこと。
茶の樹を半分近くカットするため当然茶葉がない幹だけになる。茶園全体が茶色(お茶だけに)見えるので茶園を知らない方などが見れば「枯れている」と勘違いしそうなほどだ。
 茶の樹の剪定は5~6年に一度程度、樹勢を回復し作業をしやすくするために行われるが、カットする深さにより葉の層を5cmほど切る「浅狩り」から根元近くまで切る「台切り」まである。
浅狩りは2番茶に間に合うが、深狩り以上は新芽が伸びるまでには1ヶ月以上必要なので2番茶に間に合わない。
と言うことは値のいい1番だけやって2番、3番のペットボトル用など安価なものはやらない・・・と言うことだろう。
前回も書いたが精算農家の高齢化や需要と供給バランスの悪化など茶農家の苦悩は深まるいっぽうのようだ。
黄昏の茶畑

黄昏の茶畑


 静岡県にいるとこの時期はお茶関連のニュースをよく見聞きする。苦境に立つ茶業界の話題を取り上げる一方で、反対に輸出増、抹茶・スィーツが好調、ペットボトル用茶葉の需要増、お茶を使ったグリーンツーリズムなどによる打開策報道など。
 しかし冷静に考えても茶葉輸出額では圧倒的に中国がシェア率No1だし、抹茶スィーツで使われる抹茶使用量や原料となる碾茶生産者数、ペットボトル用茶葉の単価の安さや海外産茶葉とのブレンド量、お茶(リーフ)を飲まない他県の観光客がどれほど余暇活動(グリーンツーリズム)に興味があるのかなど、ちょっと考えれば打開策に賛同できるか出来ないか判るはずだ。
 言うは易し行うは難しとはこのことだ。

 茶農家の収入を見ると、平均(栽培面積90ha)で売上300万円、経費を除いた収益は90万を割ると言う。これでは専業農家は厳しい。
ましてや茶生産者は超高齢化社会になっている。
これでは生産者の選択は廃業か収益率が高く比較的軽労働のミニトマトなど他の野菜類に移行するしかない。

黄昏の茶業界をコントロールするのは行政。手腕が問われているようだ。